News letter 第4回 過少資本税制・過大支払利子税制

 

1.    はじめに

 

 

 

近年、先進国では、租税条約において利子の源泉地国での免税を進めるとともに、租税回避の防止を目的として、支払利子の損金算入制限を強化する傾向にあります。

 

わが国における、関連者への利子の支払を通じた租税回避を防止する措置としては、①適正利率への制限(移転価格税制)、②資本の規模に対して過大な負債の利子の損金算入制限(過少資本税制)、③所得金額に対し過大な支払利子の損金算入制限(過大利子支払税制) が挙げられます。今回は②過少資本税制③過大利子支払税制について概観します。

 

 

 

2.    過少資本税制

 

1)    制度概要

 

企業が資金調達を実行するのに際し、法人実効税率が低い海外関連企業より、日本の子会社が出資に替えて借入を行い、利息支払を行うと、利息の損金算入が可能であることにより、グループ全体で節税効果が生じることになります。

 

出典:財務省HP 「過少資本税制の概要」

 

 

過少資本税制とは、上記節税効果を企図し、借入を過大に行うことによる企業の租税回避を防止するため、出資(資本)と借入(債務)の比率が一定割合を超える部分の支払利子につき、損金算入を認めないこととする制度です。

 

 

 

1)    適用除外

 

平均負債残高が自己資本の額の3倍に相当する金額以下となる場合には本制度の適用

 

はありません(いわゆる「セーフ・ハーバー・ルール」)。まずは当該セーフ・ハーバー・ルールの適用の有無を検討し、適用がないと判断された場合に、支払利子の損金不算入額の検討に移ります。

 

 

 

2)    損金不算入額

 

以下の割合が3倍(注1)を超える場合には、原則として、海外関連企業(注2)に対する平均負債残高のうち、海外関連企業の資本持分の3倍を超える部分の金額に対応する支払利子の損金算入は認められないこととなります。

 

・国外支配株主等の内国法人に対する資本持分のうちに、その国外支配株主等に対する平均負債残高が占める割合

 

 

 

 

 

1.    過大利子支払税制

 

1)    制度概要

 

過大支払利子税制とは、海外関連者に対する支払利子(注3)の額が調整後の所得金額(注4)の50%を超える場合には、その超える部分の金額については、所得の金額の計算上、損金不算入とし、翌事業年度以後7年間繰り越して一定の限度額まで損金算入を認める(注5)という制度です。

 

 

出典:財務省HP 「過大利子支払税制の概要」

 

 

 

1)    適用除外

 

以下のいずれかに該当する場合は、本制度の適用はありません。

 

・海外関連者への支払利子等の額が1,000万円以下である場合

 

・海外関連者への支払利子等の額が総支払利子の額の50%以下である場合

 

 

 

1.    制度の適用関係

 

1)    両制度の適用関係

 

法人のその事業年度に係る支払利子等について、本制度と過少資本税制の双方が適用となる場合には、利子等の損金不算入額のうち、いずれか大きい金額に係る制度が適用されます。

 

過少資本税制による損金不算入額がより大きく、過大利子支払税制の適用がない場合には、当該制度による損金不算入額の繰越は認められません。

 

 

 

2)    移転価格税制と両制度の適用関係

 

  上記とは別個の規定として、関連者間取引きに適用される移転価格税制についても考慮をする必要があります。移転価格税制の詳細な説明については本項では割愛させて頂きますが、海外に所在するグループ会社である国外関連者との取引については、原則第三者との取引価額と同様の基準となる独立企業間価格であることが求められます。支払利子についても同様に、グループ会社間取引に該当する場合には独立企業間価格と認められる適正な利率であることが求められますので注意が必要です。

 

 

 

2.    おわりに

 

以上のように我が国においては支払利子の損金算入制限措置が存在することから、海外親会社から資金調達を行う際には両税制を考慮し、かつ親会社所在国における子会社配当金についての税務上の取り扱いも検討したうえで、出資と借入のバランスを検討する必要があると言えます。

 

また過小資本税制・過大支払利子税制は日本に特有の制度ではなく、類似の制度が諸外国にも存在します。上記では国内法における取扱いを解説しているため、海外関連者から日本法人が借り入れを行うことを前提としておりますが、日本の親会社から海外子会社に事業資金を提供する逆のケースにおいても、所在国の税制に類似制度がないか事前に確認する必要があります。

 

さらに、海外グループ法人間で融資を行う場合には、支払利子に対する源泉所得税率、利子受領者における外国税額控除の適用可否などを含め、タックスプランを慎重に検討する必要があります。

 

 

 

 

 

1:一定の場合には、その内国法人と業種・事業規模等が類似する内国法人の負債・資本比率を用いることができる。

 

2:国外支配株主等と定義される。内国法人に資金を供与する者及びその資金の供与に関係のある者(資金供与者等)を含む。

 

3:関連者純支払利子と定義される。一定の受取利息相当額が控除可能である。

 

4:課税所得に、関連者純支払利子,減価償却費,受取配当益金不算入額等一定の調整を加減算した額である。

 

5:過少資本税制における損金不算入額は繰越ができない。